[ ]

322段の階段、その上の神社

#16 新田神社


:: 意外においしかったそば屋、くつろぎ庵

ホテルに荷物をあずけました。チェックインまでは二時間ほど残っています。どこかでお昼を食べて、近くをすこし見てまわらないと。

まずはホテルのすぐ前にあるそば屋をたずねました。ぜん。名前もとても短くて簡潔ですね。日本を旅しているあいだ、そば屋はお昼ごはんにとてもいい選択になります。どこにでもあるほうですし、いろんなメニューをあつかっているところが多いんですよ。

あ、でもこのお店、人気があるお店ですね。待っている人がけっこう多いです。お店の外は暑いのに、待つのにちょうどいい場所もありません。それで、ほかのお店をさがしてみます。

もういちど川内駅の1階にもどってくると、お食事処くつろぎ庵というところがありますね。こちらはお店がかなり大きくて、ならばなくてもいいところです。ただ正直にいうと、さっきのお店のほうがおいしそうな雰囲気をただよわせています。

でも、しかたありませんでした。天気はあまりにも暑くて、炎天下で長いあいだ待つことはできなかったんです。

とりあえず生ビールを一杯たのんで、メニューをゆっくり見てみます。このお店もかなり多くのメニューをあつかっているところですね。

わたしの選択は天ざるです。天ぷらとざるそばが一緒に出てくるメニューを、日本ではよく略して天ざるとよびます。とてもありふれたメニューですね。

正直ここはそば専門店ではないので、大きな期待はしていなかったんですよ。でもいざ食べてみると、そばのクオリティがかなりいいです。麺の太さが一定でないのを見ると、手で打った麺なのかもしれません。そばの含有量が高いのか、粗い感じがするんですが、それがとても魅力的です。

じっと見てみると、天ぷらの状態もわるくありません。まあ、日本で食べる天ぷらはたいてい一定の水準以上であることが多いですから。

とにかくこのお店、大きな期待はなかったのに、期待よりずっとおいしくお昼を食べることができました。

仕事に追われてマンネリにおちいっているように見えたアルバイトの子も、意外と親切でしたよ。

:: 薩摩川内の市内でただひとつの観光スポット、新田神社

お昼を食べて出てきましたが、まだホテルのチェックインの時間までは長く時間をつぶさないといけません。駅の近くのカフェで時間をすごそうとしたのに、よりによって今日が定休日ですね。

けっきょく、わたしは大きな選択をひとつしました。タクシーに乗って新田神社にったじんじゃに行ってみることにしたんです。

ここ薩摩川内の市内から遠くないところのなかで、唯一観光できそうなところといえば、まさにここです。そのつぎは川内川のまわりを散歩するくらいでしょうか。

え? いま気づいたんですが、川内川の漢字、とてもおもしろいかたちですよね? 川内川だなんて。しかも前の川は「せん」と読んで、うしろのものは「かわ」と読むのもおもしろいです。

タクシーに乗って、運転手さんに新田神社まで行ってくださいとお願いしました。

「新田神社までおねがいします」

「てっぺんまで上がりましょうか?」

「え? それって可能なんですか?」

「はい、可能です」

「では、そうおねがいします」

おお、新田神社は神亀山しんきざんの上にある神社なんですよ。だから神社まで上がっていく階段と、その階段をおおっているうっそうとした森が有名な神社です。それでわたしが「大きな決心」をしたと、さきほど言っていたわけです。夏のまんなかで、こんなに暑い日に、高い階段をのぼろうと思っていたからです。

でも、タクシーの運転手さんは、わたしに新しい情報をくださったわけですね。

山の上の神社まで車で上がっていけるという事実を。

タクシーから降りたら、すぐに階段のてっぺんです。新田神社の拝殿までとても簡単に到着しました。

ちょうど拝殿では巫女さんが二人、ゆっくりとした動作で舞を舞っていました。となりにかかっている横断幕を見ると、御神鏡清祭みかがみすましさいという行事を二日後にひかえて、特別な儀式をしている最中だったのかもしれません。

あとで調べてみると、御神鏡清祭は神社が保管している銅鏡をすべて取り出して、地域の幼稚園児たちが手で磨く行事だそうなんですが。こういう行事をする神社は全国的にとてもめずらしいそうです。しかも73枚の鏡のうち3枚は国指定重要文化財だとか。

拝殿の右手にのびる道にそって、うっそうとした森の道をすこし歩くと、可愛山陵えのみささぎを見ることができます。天皇家の祖先である瓊瓊杵尊ににぎのみことの陵墓だそうですね。

宮内庁が管理しているところです。だからここ神亀山は、新田神社の境内をのぞいたほとんどが宮内庁の管轄だそうです。

神社の規模がそれほど大きくないので、見てまわるのに時間は長くかかりませんでした。そろそろホテルにもどってチェックインをしないと。

来るときはタクシーに乗って頂上で降りましたが、降りるのは自分で歩いて降ります。汗が出ないようにゆっくり歩きました。

こうしてみると、322段の階段はそれほど負担ではありませんね。ただ、階段をのぼってくるときに見える景色を見のがすことがあるので、ときどき振り返りながら階段の景色をずっと確認しました。

階段をすべて降りてきたら、神社に上がっていく階段の前には大きな鳥居と石橋がありますね。橋の名前は降来橋こうらいばし。ここも指定有形文化財だそうです。

ここが事実上の神社の始まりなので、今日わたしはすこしずるをして、神社を逆から見てまわったことになりました。本来なら、ここで橋をわたって322段の階段を歩いてのぼり、拝殿に到着しないといけないわけですけどね。

でも、まあ、こういうのが一種のコツじゃないですか? 日が暑くて体力的にきついときは、こういうずるもすこし使うんです。

:: 外国人がタクシーを呼ぶのは、かんたんなことではない

うーん、タクシーの運転手さんのおかげで神社のてっぺんから見てまわって降りてきたのはよかったんですが。ここまで降りてきたら、問題がひとつ生まれました。

ホテルまでもどるにはまたタクシーに乗らないといけないのに、近くにタクシーがまったく見あたりません。しかもGO!アプリも対応していない地域だそうですね。

どうしようかとなやんでいて、近くに見えるファミリーマートに入りました。そしてタクシーを呼んでもらえるかとおねがいをしました。

「すみません、川内駅まで行きたいんですが、近くにタクシーが見あたりませんね」

「はい、この近くにはタクシーがないので、電話で呼ばないといけないんです」

「あ、それが、わたしは日本人ではないので、日本の電話番号がありません」

「あ、では、タクシーをお呼びしましょうか?」

「はい、そうしていただけますか? 本当にありがとうございます!」

そしてタクシーはすぐ来るからと、外は暑いのでコンビニのなかでタクシーを待ってもいいと言ってくださいました。

ちょうど暑かったので、ソーダ味のガリガリ君をひとつ買って食べました。そしてタクシーはガリガリ君を食べ終わる前に到着しました。もったいないガリガリ君をいそいでゴミ箱に捨てて、タクシーに乗りこみました。もちろんタクシーを呼んでくださった方に、もういちどありがとうございますと言いましたよ。

さあ、それではホテルにもどってチェックインをしてみましょうか?

韓国のおじさん、zzoosでした。


zzoos

live in seoul, love in drink, snap in breeze