夏の旅というのは、目が痛くなるほど澄んだ天気と景色に感嘆しては、流れ落ちる汗を冷ますために涼しいばしょを探すことの連続です。
そうして汗が少し引いたら、またどこかへ行って感嘆して、また汗が流れたら涼しいばしょを探します。このパターンの繰り返しが夏の旅なんですよね。
きょうのわたしには、その合間に自転車に乗るということが追加されました。もう少し涼しくて、もう少し汗をかきます。自転車がくれるロマンもちょっと足しました。


:: 阿久根の海辺のかわいいカフェ、港町珈琲焙煎所
阿久根の海辺のあちこちを回りました。そのなかで、夕やけが有名だというサンセットロードがいったいどんなばしょなのか、あとで日没の時間に合わせて出てくる必要があるところなのか確かめに行って、全身が汗まみれになりました。
さあ、涼しいばしょを探す番です。
わたしのレーダーに引っかかったのは、港町珈琲焙煎所というカフェです。
まず「焙煎所」という名前をみて、信頼できると思いました。ここは自家焙煎するところなんだな、ということです。だとすればコーヒーはきっとクオリティが高いはずです。わたしの口に合うかどうかは、また別のはなしですけどね。


着いてみると、カフェは思っていたよりずっとかわいいというか。それとも洗練されているというか。とにかくわたしの想像とは少しちがう雰囲気のカフェでしたが、だからこそよかったんです。
晴れわたった阿久根の天気によく似合うカフェだった、とでも言いましょうか。
冷たいコーヒーを一杯飲みたくて寄ったのに、メニューをみたら阿久根産のいちごを使った練乳かき氷が目に入ります。わたし、かき氷が本当に好きなんですよ。すごく大きなかき氷でも、ひとよりずっと速くたいらげられるくらい好きなんです。
それでアイスコーヒーを一杯と、阿久根産いちごのかき氷を注文しました。おいしかったです。
思ったよりかき氷が甘くて、コーヒーの味がかなり埋もれてしまいました。わざわざコーヒーを頼む必要があったかな? という気がしました。
でも、かき氷の甘さに飽きてきたころにコーヒーをひと口飲むと、口のなかがさっぱり洗われて、かき氷をもっと速く食べられるんですよね。それがコーヒーの必要だった理由だったわけです。



:: 海の前のフレンチレストラン、みなとれすとらん らぼんじょるね
自転車で戸柱自然公園から丘を越えてきたとき、時間はお昼になっていました。ちょうど近くに、あらかじめチェックしておいたレストランがあったんです。
みなとれすとらん らぼんじょるね。フランス語の挨拶であるLa Bonne Journéeを日本語の発音で書いたものでしょうね。
海のすぐそばで港を眺めながらフレンチランチが食べられるところだというので、チェックしておいたばしょです。日本の田舎の港町でフレンチレストランだなんて、とても目あたらしい感じじゃないですか?
あえてひらがなで書かれた看板が印象的です。フランス語で書かなかっただけでなく、カタカナでも書きませんでした。たぶん、親しみやすいレストランだという表現をするためだったんじゃないかと思います。

お昼の時間でしたが、お客さんはわたしひとりだけでした。店内は寒いくらい涼しかったです。自転車に乗ってたくさん汗をかいたあとだったので、とても気に入りました。
ランチメニューはふたつ。魚と鶏のなかから選ぶものでした。
わたしは魚を選びました。どんな魚が出てくるのか気になったんです。港町のフレンチレストランでは、どんな魚を使うんでしょうか?

いろんな料理が出てくるランチメニューでしたが、ひとつずつサーブする方式ではありませんでした。メインの魚料理が少し遅れて出てきたのを除けば、ほとんどすべての料理がいちどに出てきました。

まずスープから食べました。冷たいコールドスープでした。旬を迎えたとうもろこしをたっぷり使ったスープでした。
とても甘くて、香ばしくて、なめらかでした。このスープを食べたら、ほかの料理への期待が大きくなるしかありませんでした。

スープを半分ほど食べたところで、パンをちぎってスープにつけて食べはじめました。外はカリッと、なかはしっとりした典型的なバゲットです。

グリーンサラダは変わったところがないようにみえましたが、あのソースがよかったです。野菜も新鮮でしたし。
たいしたことないようですが、トマトの皮をむいてあったんですよね? どうしても安くならざるをえないランチなのに、こんなに繊細に下ごしらえをしてあるのがよかったです。

はじめてみたときは材料がなんなのかよく予想がつきませんでしたが、食べてみてわかりました。これはなす料理でした。香ばしいごまドレッシングをかけてあります。
日本にあるフレンチレストランだという意味でしょうか? 港町の親しみやすいフレンチレストランだという意味でしょうか?
フレンチというよりは和食に出てきそうな小皿がひとつ出てきましたね。でも、ちぐはぐではありませんでした。

とてもシンプルな冷製パスタなのに、これがすごくおいしかったです。オリーブオイルと塩、こしょうくらいがメインのようなんですが、うまみもよくて、オリーブオイルのさわやかさもよかったです。

そしてついにメイン料理の魚料理です。シェフに伺ったら、イサキだそうです。
わあ、海辺のレストランではイサキ料理も食べられるんですね。とても高い魚とはいえませんが、それでもかなり高級な魚です。あたたかい海に住む魚なので、韓国ではなかなか食べるのがむずかしい魚でもありますし。
軽く干したイサキを上手に焼いてあります。カリッとして、もっちりして、しっとりしています。
下に敷かれたソースは白ワインソース。塩けがあるので、魚とよりいっそう合いますね。

食事を終えると、テーブルをきれいに片づけてくださってからデザートを出してくださいます。
なんと3種類も出してくださいますね。プリンとロールケーキ、そしてアイスコーヒーです。コーヒーは緑茶などに変えることもできます。
どうやら手づくりのようなプリンとケーキです。素朴でありながら真心のこもった食事の締めくくりにぴったりのデザートでした。
じつは、すごい料理が出てきたわけではありません。スープとサラダ、軽い野菜料理とパスタ、そして焼き魚くらいでしたから。でも、あちこちに繊細な手つきが感じられる料理でしたし、おいしい料理たちでした。
海を眺めながらこんなに真心のこもった食事をたった1,500円で食べられるなんて、信じられないほどです。コスパがとても優れた、満足のいく食事でした。口数の少ないシェフに、ごちそうさまでしたと何度も挨拶しました。
阿久根というまちを好きになる理由が、またひとつ増えました。
韓国のおじさん、zzoosでした。
