宿にとりあえず荷物をあずけてから、自転車をかりました。チェックインまで時間がたっぷりあったので、阿久根のあちこちを自転車でまわってみようと思ったんです。
阿久根は港町なので、どこへいっても海があります。海ぞいに自転車を走らせる気分は、まさに夏の気分でした。
ちょっと暑かったですけどね。いや、かなり暑かったです。


阿久根駅の前あたりやサンセットロードのほうは、漁船の荷あげ場や大きな工場みたいなものが集まっているところなので、ふつうに想像する海とはすこし毛色がちがうんですよね。
なので、自転車で戸柱自然公園のほうへ移動しました。
なにかすごいものがありそうな、たいそうな名前ですが、小さな森のなかに小道があって、その小道をたどっていくと小さな神社がひとつある、そういうところです。そして海へつづく道をいくと、光礁という岩のある海辺に出ます。


ヴィラ・ヒカルゼという高級ホテルの裏手に、公園の入口があります。大きな鳥居をみれば、ここが公園の入口だとわかるんです。
よく晴れた七月の夏、まっぴるまに自転車でここまでくるのは、なかなかたいへんなことでした。まえにも書きましたが、日やけどめをちゃんとぬっていなかったので、うでとあしは赤くやけてきていました。
でも、あの空とあの海をみると、ペダルをこいでもっと遠くまでみてまわりたくなります。そんな夏でした。阿久根の夏は。




たぶん「鹿児島」といわれても、正確にどのくらい南なのかよくわからないかたが多いんじゃないですか。
済州島よりもずっと南で、上海とおなじくらいの緯度です。だからヤシやソテツのような亜熱帯性の植生をたくさんみることができます。そのほかの木も多いうえに葉がしげっているので、夏はものすごく青々とするところなんです。
公園の入口からしばらくのあいだ、うっそうとした木々におおわれた道を、自転車でゆっくり走りました。
木のあいだからみえる海、木の葉のあいだから落ちてくる日ざし、うっそうとした森のおかげですずしく影になった森の道は、気持ちのいいところでした。
道がおわると、うっそうとした木々におおわれていて、ふんいきの変わった小さな神社があらわれます。


神社の前にある階段をつたって、海辺へおりることができます。そこには大きな岩がひとつあるんですが。光礁という名前がついています。
よくはわかりませんが、この岩が不思議な光をはなったという伝説があるそうです。それで阿久根七不思議のひとつにかぞえられている岩なんだとか。
いざいってみると、とくに変わったところのない、ただの海辺の大きな岩、くらいの感じです。
むかしは岩のうえに小さな鳥居がひとつあったそうですが、いまはそれすらもなくて、いっそうふつうの風景になってしまいました。



光礁のとなりには、ながくのびた防波堤があります。
阿久根にきたのは海をみるためでしたから、思うぞんぶん海をみることにします。
ただ、防波堤のうえには日かげがないんですよ。だから、ふりそそぐまっぴるまの日ざしを全身でうけとめるしかありません。



防波堤のうえからみた阿久根の海は、なかなかすてきでした。そしてその海といっしょにみえる阿久根のすがたも、記憶にとどめておく価値のあるものでした。
全身にふりそそぐ日ざしをうけとめて、紫外線でやけどしてしまった皮膚を一枚あきらめたことへの、じゅうぶんな見返りになると思いました。
わたしにとって阿久根は「夏の海」として記憶にのこりそうです。砂浜でかけまわったり、すんだ水面でシュノーケリングをしたり、そういう海ではなかったけれど、この風景とにおい、やけどしそうなほど熱い日ざしが肌にふれる感じと、ほんのすこしのあいだそれをなぐさめてくれる風のようなものが、より強くのこりました。
ひさしぶりに感じる夏の海でした。

また自転車にのりました。ペダルをふむたびに汗がながれおちます。夏の自転車、ロマンチックなことばのくみあわせかもしれませんが、実際は苦難の道です。
だからといって、やめるわけにはいきません。
ペダルをふまないと、前にすすまないんですから。
さて、どこかすずしいところへいって、すこし休みたいです。
韓国のおじさん、zzoosでした。
