
わたしは旅行中、一度くらいは高級なお店で食事をするようにしています。
とくに鹿児島のように、いい食材がたくさんある街では、それをうまく使ったレストランで、おいしい料理を食べてみたくなるんですよね。
鹿児島といえば、まず黒豚が有名ですよね。
それに負けないくらい、牛肉や鶏肉も品質がいいです。
錦江湾や東シナ海でとれる、いろいろな魚もあります。
うなぎの養殖量で日本一なのも、この鹿児島なんです。
それから、沖縄にとても近い奄美群島も鹿児島県なので、沖縄の料理法や食材まで、鹿児島の郷土料理に影響をあたえています。
こんなゆたかな食材でつくったおいしい料理を食べるには、いいお店を探さないといけません。



:: 創業93年、鹿児島郷土料理の老舗「山映」
わたしが見つけたのは、ここ。
今回が二回目の訪問になる、山映です。
もうすぐ創業100年になる、鹿児島の郷土料理専門のお店です。
ホームページでは、自分たちのことを「鹿児島の老舗割烹」と紹介しているので、割烹料理のお店ともいえますね。
去年の誕生日にここを訪れたときは、電話予約しかできませんでした。
でもいまは、TableCheckでのオンライン予約もできるようになって、去年よりすこし安いコースもできたりして、いろいろ変わろうとしているみたいです。
オンライン予約ができるとは知らなくて、今回も城山ホテルにチェックインしてすぐ、コンシェルジュにたのんで予約しておきました。

まずはプイィ・フュメを一杯飲みながら、今日の料理の構成をながめます。
ところどころ、英語にタイプミスがありますね。
いっそ日本語で書いてもらったほうが、料理をわかりやすいかもしれない、と思いました。
最近は翻訳アプリがとても優秀ですから。
- 手作り梅ミキ(奄美の伝統的な発酵飲料)
- じゅんさいの梅だし酢
- いちじくの豆腐ソースかけ
- 季節の前菜
- 酒寿司
- きびなごの焼き物
- さつま揚げ
- 鯛の皮の山芋和え
- 酒盗(かつおの塩辛)、タカエビ、イカ
- お刺身
- 鯛のお吸い物
- 黒豚しゃぶしゃぶ
- 鯛だしのお粥
- 季節の果物
- ひとくちどら焼き
- 豆菓子
わたしが予約したのは、黒豚しゃぶしゃぶと郷土料理コースです。
書かれたメニューと、じっさいに出てきた料理の順番はすこしちがいました。
とちゅうで変わったり、追加されたりしたものもあります。
去年来たときも、予定よりずっとたくさんの料理を出してくださって、おなかいっぱいになった記憶があります。

:: 旬の郷土料理が次々と
最初に出てきたのは、食欲をそそるスターターです。
左は、つめたくてさわやかなおだしに、じゅんさいを入れたもの。
いっきに食欲がわいてきました。
右は、ミキというそうです。
奄美群島の伝統的な発酵飲料なんだそうです。
甘酒に似ている、といえるでしょうか?
お米やさつまいもなどを発酵させた飲みものです。
麹は使わずに、乳酸菌で発酵させるんだそうです。
そこに梅シロップを加えているので、梅の香りがふわっとします。
甘くはありません。

つぎに、きびなごが出てきました。
鹿児島を代表する魚といえますよね。
でも今日は市場がお休みで、新鮮なきびなごがなかったそうです。
きびなごのお刺身の、キラキラした銀色はほんとうにきれいなんです。
それを楽しみにしていたのに、今日はながめることができません。
ざんねんです。
かわりに出てきたのは、一日干したきびなごを軽く焼いた料理です。
上には魚卵がかけてありました。
香ばしさがとても強い料理です。
きびなごという魚は、上手に焼くとこんな味になるんですね。
これもいい経験です。
香りがすこし強いので、順番をうしろのほうにしてもよかったかな、と思いました。

真夏だったからか、いちじくの味がすこしものたりなく感じた料理です。
上にかけてあるのは豆腐のソースです。
これ、ほんとうにおいしい料理です。
去年も同じ料理が出てきたんですが、そのときは秋だったからか、いちじくがもっとおいしかったです。

鹿児島の郷土料理のお店なので、はずせないのがさつま揚げです。
今回の旅行で、さつま揚げをほんとうにたくさん食べたんですよ。
でも、これはダントツにおいしいです。
よくできたさつま揚げって、こういう味なんだ!と感じることができます。

写真ではうまく伝わらない気がしますが、ごはんです。
酒寿司というものです。
これも鹿児島の伝統料理のひとつです。
鹿児島の地酒である灰持酒をごはんにまぜて、いっしょに発酵させ、そこにいろいろな具をまぜて食べる料理です。
しいたけをはじめ、いろいろな野菜が入っていて、いちばん上にはうにがのっています。
味もいいけど、香りもおもしろい料理です。

いろいろな料理がのったお皿が出てきました。
たぶん、これがメニューに書いてあった季節の前菜なんでしょう。
ひとつずつみていきましょうか。
左上の揚げものは、あまだいの天ぷらで、その上には香りよく、さっぱりと漬けたみょうががのっています。
わたしが天ぷらを食べて「これなんだろう?」という顔をしていたら、女将さんが通りがかりに「あまだい!」と教えてくれました。
右上には、豆腐と野菜を和えたものがあるんですが、ひとくちかじってみると、中には豚肉が入っていました。
おや、これは思っていたのとはちがう味でした。
そのとなりは焼いたズッキーニだったんですが、ソースがひみつみたいです。
おいしいソースでしたが、正体はたしかめられませんでした。
うしろにあるのは、だし巻きだと思っていたら、おお、これはう巻きなんですね。
中に、よく焼いたうなぎが入っています。
とってもとってもおいしかったです。
まんなかに横長に置いてあるのはオクラ。
これはほんとうにただのオクラでした。
シャキッとしながら、ネバネバした独特の食感。
好きな野菜です。
左下には、魚の身を、骨や皮などから出るゼラチンといっしょに固めた煮こごりがあります。
たぶん、鹿児島でたくさんとれるかつおやぶり、夏が旬のかんぱちのような魚をさばいて、のこった身を使ったものでしょう。
最後に、右下のわかめは食感がふしぎでした。
生わかめではないけど、よく煮てくたくたになっているわけでもありません。
ここちよい、やわらかな食感です。
上にのせた小さなじゃこのおかげで、味と食感にアクセントが生まれます。

ああ、おいしいものが二皿も出てきました。
左の暗い色の器に入っているのは、鯛の皮を山芋で和えたものです。
お酢を入れているのか、さっぱりした味がとても絶品ですね。
鯛の皮の食感がおもしろいです。
山芋のとろみは、好ききらいがあるかもしれません。
わたしはとても好きなんですけどね。
右の白い器に入っているのは、酒盗の上にタカエビとイカをのせたものです。
たぶんイカはアオリイカじゃないかと思うんですが、たしかめてはいません。
酒盗というのは、かつおの内臓でつくった塩辛です。
鹿児島ではかつおの漁獲量がかなり多いので、内臓の塩辛もとても新鮮なんです。
あざやかな紅色の、ふんわりした色を見ると食欲がわく、そんな新鮮さです。
去年も酒盗が出てきたんですよね。
そのとき「しょっぱすぎて、すこし食べにくい」という話をしていました。
今回はそうではありませんでした。
ちょうどいい塩加減でした。
もしかして、去年わたしが言ったことをおぼえていてくださったんでしょうか?

今度は、お刺身三種が出てきました。
本ガツオのたたきと、鯛、そしてたこです。
かつおのたたきは、たぶんわら焼きじゃないかと思います。
香りがとてもよかったです。
そして、鯛。
この鯛がとても特別なんです。
写真で見るだけでも、ひと切れがものすごく大きいじゃないですか?
それで大将にたずねてみたら、なんと4.9キロの鯛だったそうです。
どれだけ大きいのか、想像もつかない重さです。
写真には見えないんですが、鯛のお刺身の下には昆布締めにしたものも置いてありました。
鯛を昆布ではさんで熟成させて、うま味が引き立ち、水分がぬけて身がもっちりする方法ですよね。

あたたかい鯛のお吸い物が、質感のいい器に入って出てきました。
つめたい料理がつづいたあとに、あたたかいスープを飲むと、気分がよくなりますね。
中には、海藻と大根もすこしずつ入っていました。


:: 後半は黒豚しゃぶしゃぶ
さあ、いよいよたれが用意されて、色つやのいい鹿児島の黒豚が出てきました。
バラ肉と肩ロースの部位みたいですね?
鹿児島の黒豚は、バークシャー種です。
なので、脂が低い温度でもとけるんです。
炭火や鉄板で焼くよりも、しゃぶしゃぶで食べたほうが、そのコクがよく感じられると思っています。
この街に来るたびに、黒豚しゃぶしゃぶを食べる理由でもあります。


用意されたおだしが煮立ったら、お肉を一枚ずつ入れて火を通します。
あまり長く火を通す必要はありません。
お肉がとてもうすいですから。
ピンク色だったお肉が白くかわって、白い脂がとけ出して、やわらかくなったら、お肉を取り出して、用意しておいたたれにつけて食べます。
やわらかさ、もっちり感、コクなどなど、黒豚の魅力がはじける、まさにその味です。
これ、ほんとうにいくらでも食べられそうなんですよね。
なので、次からは黒豚しゃぶしゃぶは、ここ山映ではなく、ほかのお店で食べようと思います。
ここでしゃぶしゃぶを思いきり食べたら、お会計が高くなりすぎそうです。
しゃぶしゃぶ専門のお店の中には、食べ放題ができるところもあるので、思いきり食べられるでしょう。

もともとメニューに書いてあったのは、鯛のだしでつくったお粥だったんですよ。
でも女将さんが、ほかのごはんもつくれますよ、と言ってくれました。
それで、どっちがおいしいですか?とたずねたら、これを食べてみて、と用意してくださいました。
白いごはんの上に、黒豚ときのこを醤油で煮てのせた丼ですね。
正確な名前はわかりませんが、これ、とてもおいしいです。
まるで、韓国の豚肉の醤油煮、チャンジョリムをごはんにのせて食べているかんじです。
食べている途中で、テーブルにお醤油をすこしこぼしてしまいました。
それでテーブルにあったおしぼりで、こっそりお醤油をふいたんですが、店員さんがそれを見ていたみたいです。
しずかに、おしぼりをとりかえてくれました。
いいお店では、こういう見えない、しずかなサービスが大きな満足をくれます。

ごはんを食べおわると、メロンが出てきました。
メロンって夏の果物なんでしょうか?
小さいのに、ものすごく糖度が高いですね。
ほんとうにおいしいメロンでした。
メロンを食べながら、空のワイングラスを持って、もう一杯飲もうか、飲むならなにを飲もうか、となやんでいたら、女将さんがプレゼントだと言って、白ワインを一杯サービスしてくださいました。
だから、ここを好きにならずにはいられないんです。

最後に、あたたかいお茶とどら焼き、それから豆菓子が出てきました。
お菓子を食べながら、女将さんと先代の女将さん、そしてわたし、三人でいろいろな話をしました。
去年も来て、今年もまた来た。
だから来年も来られたらいいな、という話もして、今日の料理がとてもおいしかったという話もして、そんな、食事のしめくくりの時間です。

:: また来年の約束をして
そのうち、わたしがべったら漬けが好きだという話をしたら、山映のべったら漬けもおいしいですよ、とおっしゃいました。
そして急に厨房に入っていって、奈良漬けを持ってきてくださいました。
べったら漬けが、大根を米麹で甘く漬けたものだとすると、奈良漬けはいろいろな野菜を酒粕に漬けたお漬物です。
ここで漬けた奈良漬けだから、食べてみて、とおっしゃいました。
酸味としょっぱさを感じる中に、酒粕で熟成させたからか、お酒の香りがします。
アルコールじゃなくて。
女将さんがキムチが好きだとおっしゃったので、来年来るときはおいしいキムチを持ってきます、と言ったら、それなら自分もおいしいべったら漬けを用意しておく、とおっしゃいました。
そうやって笑いながら、食事がおわりました。
ほんとうにおいしくて、気持ちのいい食事でした。
女将さんと店員さんたちの接客もとてもよくて、料理もどれもすばらしかったです。
すこしお値段がはるお店ですが、最近は安いコースもつくって、お客さんもすこしずつふえているみたいでした。
だれかに鹿児島のお店をすすめてと言われたら、いちばんに思いうかぶお店でもあるし、鹿児島に行くたびに寄りたい、そんなお店です。
韓国のおじさん、zzoosでした。
