数日前、ひげのみせにいったとき、こちらのマスターに会いました。とても愉快で面白いかたでした。お客さんたちも、この店を積極的にすすめてくれたんです。だから今日、ついに訪れてみました。
二軒目としてここに来たかったんですが、満席だったので、別のところでワインを一杯飲んでから、三軒目として訪れました。幸い、席がありました。
数日前にちょっと挨拶しただけなのに、マスターの向さんはわたしのことを覚えていて、とても嬉しそうに挨拶してくれました。
あ、ここは弘幸というお店です。


弘幸の看板には「和風スタンド」と書いてあります。
和風というのは日本風という意味です。スタンドというのは、簡単に言うとバーのことだと考えていいでしょう。つまり、日本風バーという意味になるわけです。
最初に日本にバー文化が入ってきたころは、ウイスキーやカクテルを飲む、洋風で洗練された店というイメージだったそうです。主に立って飲んでいたので、スタンドバーと呼ばれることもありました。立って飲まなくても、そういう雰囲気を持つバーはスタンドと呼ばれるようになったんです。
その後、ウイスキーやカクテルではなく、もっと親しみやすい焼酎や日本酒を飲めるお店も生まれはじめて、こういう店を日本風バーという意味で「和風スタンド」と呼ぶようになったそうです。
とはいえ、今の時代の言葉ではありません。60〜70年代に使われていた言葉です。つまり、この店もかなり古くからある店ということになりますね。



数日前、ひげのみせで「スナックに行ってみたい」とおすすめを聞いたとき、お客さんたちが教えてくれたのが、まさにここ、弘幸だったんです。
看板には「和風スタンド」と書いてあるのに、ここが「スナック」なんですか?不思議に思って聞いてみたら……この「スナック」という言葉が具体的にどんな店を指すのか、境界があいまいなんだそうです。「お客さん同士で歌いながら交流する場所」という観点で見れば、ここもスナックと言えるわけです。
実際、似たような雰囲気の店を「バー」と呼んだり、「スタンド」と呼んだり、「スナック」と呼んだりします。結局は店主の気持ち次第なんですね。
実際に日本人に「スナック」と「バー」の違いは何かと聞いても、誰も明確には答えられません。それくらい境界があいまいなんです。



弘幸のシステムは、正直よくわかりません。オトシ代があるのか、歌う料金があるのか、そのあたりはきちんと説明を聞いていないんです。
でも、はっきりしているのは、とても安いということです。焼酎ソーダ割りやウイスキーハイボールが500円。簡単な料理やおつまみもとても安くて美味しいです。
お客さん同士が交流しながら一緒に歌ったり、話したりもします。わたしのような外国人がひとりで加わっても、自然に馴染んでしまうんです。
今回の旅で、ここには何度も訪れました。美大出身のおじさんと出会って次の店まで一緒に飲んだり、ホストの青年といろんな話をしたり、韓国から出張で来た若者と出会ってお互い韓国人だとわかって驚いたり、結婚記念日を迎えた老夫婦にチーズのおつまみをごちそうになったり——いろんな人と出会って楽しく話すことができました。

今回の旅でわたしが一番好きになったお店です。またいつか金沢に行くことがあれば、真っ先に訪れたいお店です。
お酒やおつまみが美味しいからではありません。マスターの向さんの親切な笑顔をまた見たいし、この店ならではの温かくて楽しい雰囲気をまた感じたいからです。値段も安いので、財布を気にせず思いきり飲めるというのもいいところです。
金沢に着いた最初の夜、気に入る店が見つからずさまよっていたことを思い出します。今はもう3〜4日の夜をここで過ごして、こんなふうに気に入った店を見つけて夜を過ごしています。
だからなのかもしれません。
片町の夜の街が、とりわけ濃く記憶に残っている理由は。
韓国のおじさん、zzoosでした。

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