


午後五時くらいになりました。暗くなるまでには、まだ少し時間があるじゃないですか。わたしが見たかったのは富山運河環水公園の夜景なので、すぐに公園へ向かうよりも、もう一か所どこかを見てまわりたかったんです。
トラムに乗って、県庁前の電停で降りました。富山県庁のあるところです。
傘をさして住宅街の路地を歩きました。一度も来たことのない街の路地です。少し見なれなくて、だからこそ、ちょっとうきうきした気分でもあります。傘をさして歩く旅は、また別の気分を味わえたりもするんですよね。



目的地までたどり着く前なのに、めずらしい建物が見えてきます。ちょっと立ち止まって、写真を何枚か撮りました。グーグルマップを開いてみると、サンシップとやま、というそうです。
池原義郎という建築家が設計したもので、建物の愛称であるサンシップにふさわしく、帆を上げた大きな船のようにデザインされているのが特徴なんだそうです。
低層部と高層部が、まわりの建物の高さに近いところで分かれているので、船のかたちをした高層部が、建物の海の上に浮かんでいるような感じをあたえてくれますね。




もう少し歩いて、今日の目的地である高志の国文学館に着きました。もう時間は午後五時半をすぎています。展示を見られる時間ではないですよね。
まあ、いいんです。雨の街を散歩したかったのですから。
高志の国文学館は、富山を中心にして、むかしの北陸地方の出身の作家たちについての博物館なんだそうです。
その名前である「高志の国」がどんな意味なのか気になって調べてみると、日本の古代の地名なんですね。富山、石川、福井、新潟県をまとめた広い地域を、古代の日本では高志と呼んでいたそうです。
名前はいくつもの地域をたばねて大きくつくられていますが、現実には、この文学館の展示は富山にゆかりのある作家たちが主になっているといいます。
それもそのはずで、ほかの県では、それぞれ自分の県の出身の作家たちの展示館を、べつに持っていたいと思うでしょう。わざわざほかの県に資料をゆずる必要もないでしょうから。
とにかくここは、実際には富山ゆかりの作家たちの博物館なのに、名前は豪快に「高志の国」とつけた、そういうところなんです。


ここで展示されている富山出身の作家たちは、代表的なところでは、世界的な小説家である堀田善衞、『ドラえもん』の作者である藤子・F・不二雄、『時をかける少女』の監督である細田守などで、古代文学、近現代小説、マンガ、そして映画まで、さまざまなジャンルの作家たちについての展示をおこなっているそうです。
文学館という名前から感じられる、なんだか退屈で単純そうな感じの展示ではなく、映像、オーディオ、最新の技術を活用したデジタル絵巻など、多彩な方法の展示が特徴なんだそうですよ。
まあ、今日は見られないので、ひとまず建物の外だけをもう少し見てまわることにします。


伊藤恭行教授のアトリエ事務所であるCAn(シーラカンスアンドアソシエイツ)が設計したこの文学館は、たくさんの日本建築賞を受けた建物なんだそうです。
内部を見ていないので、ほかの部分についてはよくわかりませんが、ひとまず正面から見えるこの圧倒的なカンチレバーは、この建物の印象を決定づける大事な特徴だと思います。
正面からずっとつづいてロビーを包んでいるこのカンチレバーは、ロビーの向こうにある庭園もいっしょに抱えているんですね。その景観をできるだけ引き込むためなのか、柱や壁をほとんど使っていません。そして、カンチレバーの下の面は、その重さの感じを最小にするために、こまかく分節された板材をびっしりと配置しています。
それでいて、下の面の傾斜を二重に折ることで、厚みを持たせながらも、軽やかな感じまでとらえていました。ほんとうに印象的な構造でした。


こうして高志の国文学館を、ぐるっと一周まわってみました。
じつは、この界隈は見どころの多い街です。すぐ目の前に富山城があります。富山市佐藤記念美術館の前では、松川の遊覧船に乗ることもできます。県庁前公園の前には富山県庁と市役所がある、文字どおり富山の中心部といえるところなんですよ。
でも、今回は本格的な富山旅行ではないですからね。今日はこのくらいにして、帰ることにします。
いつか富山を目的地にする旅をすることになったら、そのときにまた来てみようと思います。
韓国のおじさん、zzoosでした。

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