お昼を食べにツバジンへ向かう途中、すてきな建物を見つけました。谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館というそうです。
とりあえずお昼を食べてから、周辺の散歩がてらここも見てまわることにしました。たまにお話ししたことがあるんですが、大学時代に建築を専攻していたんですよね。なので建築にもちょっと関心があるんです。



この建築館は、周囲の環境との調和のために、おもしろい造形の方法を使っているんです。
犀川を望んでいる面はかなり重厚なマッスなんですが、寺町を望んでいる面は、通りのスケールに合わせて分節された建築の言葉を使っています。薄いルーバーを長く配置して、単調じゃない連続性を確保しているんですよね。
通りのスケールに合わせたとはいっても、通りの方向に沿ってすっきりと横に伸びた造形は、視線とともに動線を吸い込むように力強いんです。
だからこの道を歩いていると、この建築館に入ってみたくなるしかないんですよね。



建物に入場すると、すぐに案内と切符売り場が出てきます。わざわざ特別展を見る必要はないと思って、常設展だけ見られるチケットで購入しました。展示の規模が小さめなので、すぐに見て出てこられます。
1階は案内と切符売り場、そしてカフェ、地下1階は特別展示室、2階は常設展示室に分かれています。
案内にしたがって1階のホールに入場すると、2階に上がることもできるし、地下1階に降りることもできます。わたしは常設展を見るので、2階に上がりました。
でもここ、ホールの空間が大したことないようでいて、けっこうおもしろいんです。
シンプルで明快に機能を集めた空間なんですが。2階と地下1階に空間がつながるように開放して、移動する先の目的地を見せると同時に、2階と地下1階での空間感を拡大する役割もしているんです。
2階に上がる階段の中央壁も、構造的に必要な部分だけをすっきりした四角形でふさいでいて、残りの空間をすべて開けているので、このホールで感じる開放感が、空間の規模のわりにとても大きいんです。


2階の常設展示館には、迎賓館赤坂離宮の別館である游心亭のメイン客室と茶室を再現してあります。この游心亭が谷口吉郎の作品なんですよね。
とりあえず2階に上がってくると、メイン客室と茶室より先に目につくものがあるんです。
まさに大きな通し窓です。そしてその通し窓の前には、静かに水が流れています。どことなく、数日前に訪れた鈴木大拙館の水鏡の庭が思い浮かびます。
はい、そうです。まさにこの建物も、鈴木大拙館を設計した谷口吉生が設計した建物なんです。
谷口吉郎、谷口吉生。名前が似ていますよね? まさに谷口吉生のお父さんが谷口吉郎なんです。父子がどちらも日本を代表する有名な建築家というわけですね。


お父さんである谷口吉郎は、日本の伝統に関心が多い建築家でした。でも彼が使う建築の言葉は、徹底して現代的だったんですよね。
伝統的な木造建築の線と比例を、現代的なコンクリートや鉄骨の構造に翻訳することを追求した人です。日本の伝統建築の空間構成と分割、材料の使い方やディテールなどを、現代建築の言葉で表現することに集中して、大きな成果をなしとげた建築家です。
2階の展示室で見られる游心亭の茶室やメイン客室を見ると、もっと詳しく感じられます。
伝統的な畳と家具の構造を維持しながらも、壁面の分割や窓枠の仕上げは、定規を当てて切ったような、モダニズムの文法を使っています。伝統的な格子戸の要素を、現代的な天井ルーバーの造形に再解釈したディテールも見られるんですよね。



息子である谷口吉生は、お父さんより一歩さらに進みます。材料や空間構成など、目に見えるものだけじゃなく、建築が表現しようとするもの、その建築の中に込められるものにまで、東洋の哲学的な思想を込めようと努力する姿です。
数日前に見た鈴木大拙館がそうだし、ニューヨークのMoMA再設計の当選作もやはり、徹底して装飾をそぎ落とし、その中にプログラムと暮らしを込めようとしたことが感じられる作品です。「予算が十分なら、建築を見えないように建ててあげよう」という彼の言葉が、まさに「空にしてこそ満たせる」という東洋的な思想をそのまま見せていると思います。


常設展示は、游心亭のメイン客室と茶室、二つだけです。なので観覧時間がとても短いんです。
すべての観覧を終えてから、また2階の通し窓の前に行きました。椅子に座って窓の外を、水をしばらく眺めました。
旅の最後の日、韓国に帰ればわたしを待っている日常を思い浮かべるよりは、ここ数日、金沢で感じたことを噛みしめていました。
そしてまた席から立ち上がって、建築館の外に出ました。そして建物に沿ってまわり、階段を降りてきました。犀川に沿って川辺を歩きたくなったんですよね。
韓国のおじさん、zzoosでした。
