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350年つづく料亭で、お昼を

#38 つば甚


金沢での初日、新天地のワインバー・イルマーレで、とても特別なお客さまに出会ったんです。ありがたいことにインスタのアカウントを交換して、そのときは小さな食堂をやっていると紹介してくださいました。

でも、実はそのかたは、金沢でいちばん有名なお店ともいえる、なんと350年つづく料亭、つば甚の女将、鍔裕加里つばゆかりさんだったんです。

加賀百万石の礎を築いた前田利家まえだとしいえのお抱え鍔師として金沢に入ってきた家が、まさに今のつば家です。

そして三代目にいたって、友人や知人に料理をふるまう小さなお店を開いたんですが、それが口コミで広がって有名になり、つば甚のはじまりになったそうです。それがちょうど350年ほど前のことなんですね。

ちなみにつばというのは、刀の柄の上にある保護の部品のことです。刀身と柄のあいだにある、丸くて平たい板のことですね。

このつば甚では、いまもその「つば」を家の紋として使っています。

DMでいつ訪ねるのがいいかを話しているうちに、けっきょく旅の最終日である今日、ここを訪ねることになりました。残念ながら夜は2名以上でないと予約できないので、お昼を予約したんです。

予約はテーブルチェックからでき、支払いもそのサイトで先に済ませます。現地では、追加の分だけ支払えばいいというシステムなんですね。

ちなみにお昼にはかに粥が用意されます。もともとはズワイガニを使うそうですが、4月は旬ではないので、ベニズワイガニを使うそうです。

予約の当日、ホテルからゆっくり歩いて犀川大橋を渡りました。犀川ぞいの景色をながめながら、つば甚に着いたんです。

着いて、少し驚きました。今日のお昼の予約が、わたしひとりだけなんですね。この広い空間とこの景色を、わたしひとりで味わうんです。こんな贅沢を味わってもいいのかな?と思うほどの、素敵な景色です。

席について、スパークリングワインをひとつ頼みました。コドルニュ・クラシコ・セコというスペインのカバです。ベンハミンと書いてあるのは、200mlの小さなボトルという意味です。

ひとりで軽く飲むのにちょうどいい量ですね。値段も高くなくて、味もほどよいです。

そして、かに粥が出てくる前に、まず前菜が出てきました。

日本語でものすごくくわしく説明してくださったんですが、すべてを聞き取ることはできませんでした。いっそコースメニューだったら、コースの書かれたメニュー表でもあったんでしょうけど、そういうものがなくて、ただ記憶をたどって紹介してみます。

まず左上には、何種類かのお刺身と野菜の漬物がありました。少し暗い色の透明なソースは、醤油が一般的になる前にお刺身をつけて食べていたソースの一種で、煎り酒というそうです。甘酸っぱくて、旨みの感じられるソースでした。

白身魚に見える二種類のお刺身がありました。魚の種類は聞けませんでしたが、片方は特別な技法で熟成させた鯛じゃないかと思いますし、もう片方はすっきり熟成させた鯛のようでした。

そしてそのあいだにきれいに並べられたエビは、とても甘くておいしかったです。ガスエビと味が少しちがった気がするので、これはシロエビだったんじゃないかなと思います。

季節に合わせたのか、新鮮な菜の花の漬物があって、その下には、よく見えないですが、新鮮なたけのこもありました。おとといも市場でたけのこをたくさん見かけました。今が旬の野菜たちですね。

小さなカップの中には、あたたかい海藻が入っていました。もずくじゃないかと思ったんですが、あたたかくして食べるのは初めてでした。味が濃くないので、するっと飲むことができました。

そのとなりには、たけのこをふくめていろんな材料をこまかく刻んで、形をつくって、しっかり蒸して、その上に濃いめの出汁をかけたあんかけ蒸しです。つば甚の紋が押されているのがおもしろいです。

左下にあるのは煮魚だったんですが、単純な煮つけではなかったと思います。たぶんブリじゃないかと思いました。ただ、この煮つけは少しぱさついているのが欠点でした。

そのとなりは、里芋を茹でて焼いたもののようでした。やわらかい食感と香ばしさが一緒に感じられてよかったです。

最後に右下には、何種類かの野菜がよく茹でてありました。なすの食感がとても絶妙でしたね。れんこんもとてもやわらかくておいしかったです。

たぶんそれぞれの料理が、みんなそれぞれのやり方で特別に調理されたものなんでしょうけど、説明をちゃんと聞き取れなくて、ほとんどがわたしの「推測」になってしまったのが、少し残念ですね。

前菜を食べていると、いよいよかに粥ができあがったと教えてくださいます。とくに土鍋の蓋を最初に開けるときに香りがいいので、来て直接体験してみてくださいと言われたんですね。

これは事実上フォトタイムです。このとき動画を撮らなかったのが、少し悔やまれます。多くのかたが蓋を開ける場面でリールをつくって上げていらっしゃるんですよね。

かに粥のゆたかな香りをかぎながら、シェフとご挨拶して、いくつか誉め言葉を交わしてから、また席にもどって座りました。

粥は二回に分けてサーブされると教えてくださいました。一回はすっきりした粥で、次の一回は内臓のふくまれた、より濃い粥で出されるそうです。

これが先に出されるすっきりした粥です。かにの身がたっぷり入っていて、お米はやわらかくよく炊けています。出汁もとても濃い味なので、文字どおりおいしいです。

一緒にくださる漬物と食べると、単調な味に変化をつけてくれて、さらにいいですね。

一杯目を食べ終えると、すぐに次の粥を持ってきてくださいます。今度は内臓がのっています。器の色も変わりましたね。

そして粥のとなりに、さわやかな緑色の香味野菜が置かれています。そのときはちゃんと説明を聞き取れなかったんですが、4月末という時期を考えてみると、花山椒はなざんしょうじゃないかなと思います。山椒のような強い味ではなく、ほんのり清涼感のある香味野菜です。

これを粥の上にのせて食べるように教えてくださったので、とてもたっぷりかけて食べました。

やっぱりかに粥は、内臓があってこそ、その濃厚な本来の姿を見せてくれますね。二杯目のほうがずっとおいしかったです。

残ったスパークリングと一緒に、ゆっくり、犀川の風景を見ながら食事を終えました。

そういえば、これといったデザートはなかった気がしますね。

正直に言って、けっこう値の張るお店です。夜のコース料理はひとり3万円を超えますし、わたしが食べたお昼も6千円をゆうに超えます。

でも、なんですよね。たしかに料理がおいしいんです。スタッフのサービスもとても素晴らしいですし。食事をしながら見下ろす犀川の風景もいいんです。

旅の途中で一度くらいは高級レストランで食事をするんですよ。今回の旅では、まさにここ、つば甚でした。たぶん次に金沢をまた訪れたら、そのときもここに寄るんじゃないかなと思うくらい、気に入った場所でした。

韓国のおじさん、zzoosでした。


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zzoos

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