4泊5日のうち、3日目の夜です。
今日は、
居酒屋のような場所で夕食を食べたいと思いました。
美味しい佐賀の日本酒も一緒なら、
なおさらいいですよね。
そんな気持ちでGoogleマップを見ていたところ、
ふじやという店が目に入りました。
人気店というよりは、
隠れた地元の人たちのアジトのような雰囲気。
実際、レビューの数も少なく、
事前に分かる情報はほとんどありません。
食べログにも登録されていない店でした。
なんとなく、直感が働きました。
冒険してみたくなったんです。
こういうふうに
「いい店を見つける感覚」が働くことが、
けっこうあるんですよね。
今回も、
そんな感じでした。


店の前に着いてみると、
地図を見ていなければ絶対に見つけられなかった、
そんな店です。
看板が奥に隠れていて、
店というよりは普通の住宅のように見えて、
そのまま通り過ぎてしまいそうな場所でした。
呑処ふじや。
「呑処」は「飲み処」を少し古風に書いたものだそうです。
直訳すると「飲む場所」、
つまり「お酒を飲む場所」。
結局「酒場」と書いてあるのと同じですね。
居酒屋や酒場と書かないのも、
どこか独特な雰囲気があります。
扉を開けて入ると、
お客さんはいなくて、
店主らしきおじさんが一人でビールを飲んでいました。
一人だと伝えると、
ここは予約のお客さんだけを受け入れている店だと言われました。
ああ、なるほど。
予約制だから、
外に看板を出す必要もなかったんですね。
残念ですが、
引き返すしかありません。
店の前のベンチに座って、
さてどこで夕食を食べようかと
もう一度Googleマップを見ていたその時、
店主が外に飛び出してきて、
とりあえず中に入れと言います。

この店には、
メニューがありません。
お酒に合う季節の料理を、
店主がその場で考えて出してくれるスタイルです。
予約していれば
もっといい食材を用意できたかもしれないけど、
今日はあるもので作るしかないと言われました。
最初の一杯は、
芋焼酎のソーダ割りでお願いしました。

すぐに出てきたのは、
鳥レバー。
鶏のレバーを醤油で煮た料理です。
レバー特有の食感と香りはありますが、
醤油のおかげで食べやすい。
少しパサつく感じもありますが、
そういう時に焼酎を一口飲むと、
すっと流れていきます。

店主に、
クジラを食べられるかと聞かれました。
韓国でもクジラは食べたことはありますが、
あまり好きではありません。
少し迷ったのですが、
本当に美味しいから食べてみてほしいと言われて、
お願いしました。
韓国では混獲されたものしか流通しないので、
新鮮なものはなかなか食べられないんですよね。
出てきたのは、
クジラの赤身。
マグロのように特定の部位ではなく、
脂のない赤身全体を指すそうです。
上にはたっぷりの生姜。
少しクセがあるのかと思いましたが、
驚くほどクセがなく、
とてもクリーンで爽やかな味でした。
軽く醤油で漬けているのも
かなり良いポイント。
量が少ないのが惜しいと思うほど、
美味しかったです。
脂がないので、
食感も柔らかかったです。

次は、
カンパチと菜の花。
軽く醤油に漬けたものです。
好きな魚と野菜が出てきて、
完全に好みに刺さりました。
今ある食材だけでこのクオリティなら、
予約して来たらどれだけすごいものが出てくるのか。
確実に実力のある店だと感じました。

口直しのソーダ割りを飲み終えたので、
ここからは日本酒です。
最初におすすめされたのは、
岩の蔵 純米吟醸。
七田で有名な天山酒造の限定流通の日本酒だそうです。
一口飲んで、すぐに納得しました。
この店の日本酒は本物だ。
派手な香りのモダン系ではありませんが、
雑味のないクリアな味。
飲みやすく、料理にもよく合います。

次に出てきたのは、海苔。
ただの海苔?と思いましたが、
「有明海で一番いい海苔」だと言います。
参考までに、
有明海は佐賀・長崎・熊本に囲まれた内海。
唐津は北側なので、直接は面していません。
確かに美味しい海苔でしたが、
正直そこまで絶賛するほどかは少し悩みます。
韓国で良い海苔を
日常的に食べているからかもしれません。

鱈の白子は、
日本ではかなり高級な食材です。
韓国では鍋の具材の一つという感じで、
そこまで主役ではないですよね。
でも日本では、
季節になるとわざわざ食べに行くほどの食材で、
価格も高めです。
新鮮な白子をポン酢で。
臭みはなく、
クリームのように滑らか。
魚が違うのではなく、
新鮮なものをちゃんと調理しているかどうかの違いでしょう。

もう一杯おすすめをお願いすると、二本持ってきてくれました。
少しずつ注いで、飲み比べて選べと言います。
左は、よこやま純米吟醸 SILVER 超辛7 生詰。
壱岐島の重家酒造のモダン系日本酒。
壱岐は行政上は長崎ですが、
唐津のすぐ北西にある島。
距離的にも近いので、このセレクトは納得です。
香りは立ちますが、
甘さはほとんどなく、
超辛口でありながら香り豊かという
独特なポジション。
そして右は、光栄菊 清海。
ここで出会うとは。
光栄菊酒造は2019年に復活した、ほぼ新しい蔵。
「佐賀の新政」とも言われるほど、
今一番注目されているモダン系です。
生産量も少なく、公式サイトもなく、
Instagramのみという
かなり尖った存在。
実は出発前に
佐賀で飲むべき日本酒を調べていて、
その中の一つがこれでした。
唐津は小さい町なので、
こういうレアなお酒は難しいと思っていたのですが、
まさかここで出会えるとは。
酸味主体のモダン系。
香りもよく、
全体的にクリーン。
実験的な酒が多いと聞きますが、
清海はオフィシャルラインだからか、
整った印象もありました。
結局、
両方とも一杯ずつ飲みました。
この店、日本酒のラインナップが本当にいい。
普通では手に入らないものばかり。
限定流通や、人気で入手困難なものなど。
こういう店は、また必ず来たくなります。
そういえば、
店主に新政や十四代が好きだと話したので、
それでモダン系を出してくれたのかもしれません。

かぶの浅漬け。
日本酒に合うからと出してくれました。
韓国ではあまり食べない食材ですが、
日本ではよく見かけます。
この少し慣れない食感と味が、
旅に来ている感じを強くしてくれます。
もちろん、
日本酒との相性もよく、
美味しかったです。

これは理解するのに少し時間がかかった料理です。
あこや貝、
つまり真珠の貝。
普段食べるものではありません。
しかも貝柱ではなく、
その周りの「ひも」の部分。
韓国語にもぴったり対応する言葉がない気がします。
以前、韓国で「貝のひも」で作った塩辛を食べたことがありますが、
たぶんそれに近い部位でしょう。
とにかく、
酒のつまみとしてとてもいい。
貝柱に似ていますが、
もっとコリコリしていて、
旨味と香ばしさが強いです。

話の流れで、
唐津でしらすはまだ早いかと聞いてみました。
もちろん生しらすのことです。
それは5月からだと言われました。
すると、
何かを取り出して出してくれました。
生ではなく、釜揚げしらす。
少し干したものです。
横には大根おろしと醤油。
これも良いおつまみでした。
小さな店で、
店主と二人で話しながら食べる。
そんな時間が心地よい場所でした。
料理も食材も一つ一つがしっかりしていて、
特に日本酒のラインナップが素晴らしい。
また必ず来たい店です。
予約制の店なのに、
たまたま入れたのも
本当に運が良かった。
韓国のおじさん、zzoosでした。

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